猫の手を借りる

この記事は約2分で読めます。
From:ぱくたそ

日本語の慣用句。さほど戦力にはならないかもしれないが、それでも手助けが必要な状況を表現するために使う。例えば、「猫の手も借りたいほど忙しい」とか。

興味深いもので、「手」というのは、古今東西で助けの象徴のことが多い。だからだろうか、同じ借りるでも、単に猫を借りるのと、猫の手と限定して借りるのとでは、言葉の意味が違う。「猫を借りる」ときは戦力として期待されているようだが、「猫の手」は期待されていない。何でよ、と言いたいところだが、この慣用句のオリジナルを考えれば、理由はわからんでもない。

それは何かといえば、定説では、人形浄瑠璃「関八州繋馬」。作家は、数々の名作を残し、日本におけるシェイクスピアとも言われる近松門左衛門。関八州繋馬は、彼の遺作でもある。

近松門左衛門ではないが、人形浄瑠璃の参考。夜討曽我人形製 By:歌川国貞/From:NDL

あらすじはというと、平将門の遺児である相馬良門・小蝶の兄妹が、父の意思をついで天下平定を目論み、邪魔になる源頼光とその弟、頼信・頼平と争うなか、小蝶が頼信に恋をしてしまい・・・という話。創作での将門の娘といえば滝夜叉姫のほうが有名な気がするが、小蝶はそのベースとなったとか。

この中に、頼信が伊予の内侍と結婚する一幕があるのだが、その準備のシーンで「上から下までお目出度と、猫の手もかりたい忙しさ」と出てくる。なるほど、お偉いさんの結婚式の準備ともなれば仕事は山積みで、使えるものは全部使いたいと思うのも当然だ。

そうはいっても鼠退治とちがって、結婚式の準備には、猫は助けになるどころがむしろ邪魔にしかなららない。なんなら、祝言の御馳走をつまみ食いしたっておかしくない。料理人は、鯛の尾頭付きの数が合わないので頭を抱えることになるだろう。

忙しいときにヘルプが欲しくなるのはわかるけど、やはり目的に応じたヘルプを用意したほうが、効率的なようだ。


Reference

  • https://dl.ndl.go.jp/pid/876605/1/15
error: Content is protected !!
タイトルとURLをコピーしました