猫、あるいは文化が必需である理由

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ネコは遥か昔からヒトと生活圏を共有し、また共生してきた。その存在はあまりにも身近で、単なる家畜、愛玩動物の域を超え、古今東西のそこかしこで様々な象徴となっている。あるところでは神の使役動物とされ、あるところでは悪魔の使い魔とされる。またあるところでは幸運を呼び、あるところでは不幸の先駆けとされる。ネコ自身が化け物とされる一方で、神の化身ともされている。同じく身近な動物に犬がいるが、犬はここまで振れ幅は大きくない。それはなぜか。

美女と犬 By:鈴木晴信/Source : Art institute of Chicago

その理由はネコ、いや神にしかわからないかもしれない。しかし実体験から思うに、ネコの行動が異質で何を考えているのか理解不明なことも理由の一つだろう。異質というのはつまり、ネコが本質的に単独で成立する動物であるのに対し、ヒトは本質的に集団で成立する動物ということだ。

自分と異なる存在だからこそ、顔も見たくないほどに嫌いにもなりえるが、気になって四六時中相手のことばかり考えたくもなる。会えなくなれば、それはもう何としても再会しようと死に物狂いになる。そう、恋や愛と全く同じ現象だ。

By : guapita50 / Source : Pixabay

そう考えると納得する。おそらく有史以前から21世紀の今日に至るまで、ヒトはヒトへの恋や愛を題材に物語を紡ぎ、歌を歌い、絵や彫刻を残し、果ては科学の領域にまで持ち込んだ。ヒトに適用されたこれらを、恋や愛と同じ現象を引き起こすネコに適用してはいけないということはない。断じてない。

かくしてネコは、歌の題材となり、物語ではわき役はもちろん主役も務め、数々の絵や彫刻に残され、デザインのモチーフにもなった。科学への貢献だってゼロではない。こうして生み出された数々の思想や行為、創作物は、地域、宗教、趣味や主義思想などを共通項としたヒトの集団で共有され、改変され、また新たに集団に参加したメンバーに継承されるに至った。一般的には、これを文化という。

By : Motoi Kenkichi(SVG version) / Source : Wikimedia

だからネコにまつわるよしなしごとを語ることはつまり、文化を語ることと同じなのだ。ここでは、ネコを切り口に文化、というか文化らしきものの切れ端を集めるつもりだ。切れ端というのはつまり、物語や歌や絵に出てきたネコや、慣用句の中のネコ、人や場所や歴史に関係するネコ、科学技術の発展に貢献した?ネコなどのことだ。あくまで切り口なので100%ネコ話にはならない。ネコねこMAXを期待する人には申し訳ない。また、基本的にはイエネコが中心になるが、文化という側面からするとトラやライオンなどを無視することはできない。広くネコ科ととらえてもらいたい。

こんなものを見たり読んだりしたところで、目の前にある請求書が消えて無くなるわけでもないし、今日しでかしたトンデモナイ仕事のミスがなかったことになるわけでもない。だけど少なくとも気晴らしにはなるし、運が良ければ、辛く厳しい人生の一局面で、生きる力を得られるかもしれない。そもそも、文化とは、人間らしく生きるとはそういうものであったはずなのだ。

First posted date : December 12,2022

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